AI間取り図作成ツールは、敷地の大きさ、部屋のリスト、隣り合わせたい部屋、方位といった要望を書いた文章から、数分で2Dの間取りの下書きをつくります。結果は素早いラフスケッチと考えましょう。案の比較や意思疎通には最適ですが、動線、法令上の寸法、構造のチェックは欠かせず、確認申請には建築士が必要です。
ポイント
- House-GANのような研究用モデルは約11万7,000枚の実在の間取り図で評価されており、よくあるパターンは得意でも、珍しい条件は苦手です。
- 建築基準法施行令では居室の天井高さは2.1m以上、住宅の階段は幅75cm以上・蹴上げ23cm以下・踏面15cm以上。AIの下書きはこうした寸法を見落としがちです。
- よい要望書には、敷地、目標面積つきの全部屋、接すべき部屋、方位と道路の位置が書かれています。
- RIBAによると2025年に英国の設計事務所の59%がAIを使っており(2024年は41%)、一方で米国AIAの調査では日常的に使う建築家は6%でした。
- AIの間取り図は設計の下書きで、施工図ではありません。日本では木造でも延べ面積100㎡を超えると、設計に建築士の資格が必要です。
AI間取り図作成ツールとは?仕組みをわかりやすく
AI間取り図作成ツールは、入力や選択で与えた条件(敷地の境界、寝室の数、目標の延べ面積、まとめたい部屋)から、壁、ドア、室名の入った2Dレイアウトを1つ以上返します。内部では大きく異なる2つの方式が使われていて、自分がどちらを使っているかを知れば、奇妙な結果の大半は説明がつきます。
方式1:レイアウトを学習したモデルと制約ソルバー
研究分野では、住宅をグラフとして扱います。部屋がノードで、「キッチンがダイニングに接する」がエッジです。2020年に発表されたHouse-GANはこのグラフを入力に部屋の矩形を出力するモデルで、著者らは約11万7,000枚の実在の間取り画像で評価しました。約8万件の間取りを収めたデータセットRPLANで学習するモデルもあります。商用ツールの中には、その上にルールベースのソルバーを重ね、面積、隣接関係、敷地境界を守らせるものもあります。
方式2:画像生成
汎用の画像生成モデルでも、間取り図らしいものは描けます。壁があり、ドアの開き勝手があり、室名もきれいに並びます。ところが形が閉じていない、寸法の合計が合わない、ドアのない寝室がある、ということがよく起きます。雰囲気をつかむには十分ですが、図面ではありません。ベクター(DXF、SVG)で書き出せない、壁を編集できないツールなら、レイアウトを解いているのではなく絵を描いていると考えてください。
AIの間取りは使える?得意なことと苦手なこと
正直に言うと、AIは設計の最初の1時間はとても得意で、最後の100時間は苦手です。案を素早く出し、寝室を分散させる案と1か所にまとめる案を数分で比べられ、設計の素人にも反応できる具体的なたたき台を与えてくれます。それだけでも、建築士との打ち合わせ回数をかなり減らせます。
弱点は学習データから来ています。2025年のResPlan論文は、RPLANが「主に長方形の部屋からなる単純な単戸のレイアウトで占められている」と指摘しています。つまり、細長い傾斜地、中庭のある家、専用の出入口がある仕事部屋、二世帯住宅といった条件は、どのモデルにとっても学習範囲の外です。ありがちな長方形の組み合わせに逃げると思っておきましょう。
- 得意:ゾーニング、昼と夜の空間の分離、同じ建築面積で3LDKと4LDKを比べること、面積の概算。
- そこそこ:階段の位置、ぶつかり合うドアの開き、実際に収まる家具の配置。
- 苦手:構造(スパン、力の流れ)、配管の合理性、斜線制限や建ぺい率などの敷地条件、避難、気候、眺望。
AI間取り図作成で失敗しない要望書の書き方
悪い出力の多くは「モダンな3LDK」のような1行のプロンプトから始まります。テキストから間取り図をつくる方法がうまくいくのは、文章が建築士への要望書のように、測れて、優先順位があり、実際の敷地に結びついているときです。例として、南道路で12×17m(約204㎡)の敷地を考えます。これはフラット35利用者調査(2025年度)の土地付注文住宅の敷地面積の中央値206.1㎡に近い広さです。次のように書けば、スタイルの言葉を並べるよりずっと使える下書きが得られます。
- 敷地と建物の規模 敷地の寸法、わかっている範囲の建ぺい率や後退距離、道路と北の位置、最大の建築面積か延べ面積を書きます。例:敷地12×17m、南道路、隣地から1m以上離す、2階建て、延べ約110㎡。
- 目標面積つきの部屋リスト 部屋の数だけでなく、すべての空間に広さの幅を付けます。例:LDK 18〜20畳、主寝室8畳とウォークインクローゼット、子ども部屋6畳×2、浴室1坪、洗面脱衣室2畳、収納付きの玄関。
- 隣接と分離 接するべき部屋と離すべき部屋を明記します。キッチンはダイニングと庭につながる、寝室は道路から離す、来客用トイレは玄関近くでリビングに面さない、など。
- 方位と光 朝日や西日を受ける部屋、眺めに向ける部屋を書きます。夏の暑さが厳しい地域なら寝室は涼しい側に、寒冷地ならLDKを日の当たる側に置くよう指示します。
- 優先順位と譲れない条件 譲れないものを3つ順位付けします。玄関から庭までの見通し、車庫の上に寝室を置かない、キッチンと浴室を1か所の水まわりにまとめる、などです。
家の広さ自体に迷っているなら、敷地サイズ別の小さい家の間取りガイドで一般的な敷地に対する延べ面積の目安を紹介しています。参考までに、住宅金融支援機構のフラット35利用者調査(2025年度)では土地付注文住宅の住宅面積は平均110.3㎡、米国国勢調査局の2025年の新築住宅データでは完成した一戸建ての中央値が2,142平方フィート(約199㎡)でした。
AIが作った間取り図でチェックすべきこと
気に入ってしまう前に、すべての下書きを同じチェックリストに通しましょう。日本の住宅なら、まず建築基準法施行令と建築基準法の基本的な数値です。比較のため、Fine Homebuildingが要約した米国の国際住宅規準(IRC)の値も並べました。
| 項目 | 日本の基準 | 米国IRC(参考) |
|---|---|---|
| 居室の天井高さ | 2.1m以上(施行令21条) | 7フィート(約2.13m) |
| 住宅の階段の幅 | 75cm以上(施行令23条) | 3フィート(約0.91m) |
| 階段の蹴上げ(最大)/踏面(最小) | 23cm/15cm(住宅の階段、施行令23条) | 7¾インチ/10インチ(約196mm/254mm) |
| 居室の採光に有効な開口部 | 床面積の1/7以上(原則) | ― |
| 居室の換気に有効な開口部 | 床面積の1/20以上(建築基準法28条) | ― |
| 居室の最小面積 | ― | 70平方フィート(約6.5㎡) |
| 廊下の幅 | ― | 3フィート(約0.91m) |
| 畳数表示の1畳 | 1.62㎡以上(不動産広告の表示ルール) | ― |
米国の階段の数値はボイシ市のIRC R311.7.5の解説資料によるものです。畳の広さは不動産の表示に関する公正競争規約施行規則で、畳1枚あたり1.62㎡以上(壁心面積を畳数で割った値)と決められています。AIが「6畳」と書いていたら、壁心で約9.7㎡あるかを確かめましょう。
動線:実際に歩いて通れるか
玄関から各寝室まで、キッチンからゴミ置き場と駐車場まで、経路を指でたどってみます。いくつの部屋を通り抜けるかを数えましょう。AIのレイアウトは、通り抜けるだけのリビングや、別の寝室を経由して入る寝室が大好きです。キッチンも確認します。米国NKBAのキッチン計画ガイドラインは、作業通路を1人なら42インチ(約107cm)以上、2人なら48インチ(約122cm)以上とし、ワークトライアングルの合計は26フィート(約7.9m)以下、各辺4〜9フィート(約1.2〜2.7m)を推奨しています。
水まわりの集約と配管の長さ
キッチン、浴室、洗面脱衣室、トイレがどこに配置されたかを見ます。背中合わせにまとめる、2階建てなら上下に重ねると、排水管が短くなり通気もシンプルになります。生成ツールは平気でトイレを家の四隅に散らしますが、紙の上では成立しても配管工事で実際にお金がかかります。私たちなら、それを受け入れる前に部屋を動かします。
方位、構造、ドア
日当たりを判断する前に、方位記号を実際の敷地と照らし合わせます。次に無理なスパンを探します。壁も梁の線もない9mのリビングは、構造設計者の検討が必要です。最後に、すべてのドアを頭の中で開けてみましょう。便器に当たる、廊下をふさぐ、別のドアとぶつかる開き勝手は、生成された間取り図で最もよくある小さなミスです。
- 2.1m 居室の天井高さの最低値(建築基準法施行令21条)
- 75cm 住宅の階段の幅の最低値(同23条)
- 1/7 住宅の居室に必要な採光面積の割合(原則)
- 1.62㎡ 広告で「1畳」と表示できる最低の広さ
AIの間取りと建築士の設計、何が違う?
大事なのは、AIが建築士に取って代わるかではありません。それぞれがどの仕事を得意とするかです。AIの下書きは安くて一瞬なので、何が欲しいかをまだ決めている最初の段階に向いています。建築士は、敷地の分析、法令、構造との調整、そして責任を担います。確認申請で求められるのは、まさにそこです。
| 作業 | AIツール | 建築士 |
|---|---|---|
| 5〜10のレイアウト案の比較 | 数分、ごく安価 | 数日、設計料がかかる |
| 部屋の広さとゾーニング | 最初のたたき台として優秀 | 敷地と要望に合わせて洗練 |
| 建ぺい率・容積率・斜線制限 | 入力した内容だけ | 地域のルールと照合 |
| 構造、設備、省エネ | 扱わない | 構造・設備の専門家と調整 |
| 確認申請図書・施工図 | 作れない | 作れる(建築士としての責任を伴う) |
| 最適な使い方 | 要望と優先順位をはっきりさせる | 要望を建てられて許可の下りる設計にする |
日本では建築士法により、木造住宅でも延べ面積100㎡を超えると一級・二級・木造建築士のいずれかでなければ設計できません。さらに国土交通省によれば、2025年4月以降は都市計画区域などの中で「平家かつ延べ面積200㎡以下」以外の建物に構造規定などの審査が必要になりました。専門家を使わずに進めたい人は、先に家の間取りを自分で作るガイドを読んでおいてください。
2026年、建築家はAIをどう使っている?
導入のスピードは市場によってまちまちです。RIBA(英国王立建築家協会)のAIレポート2025によると、AIを使う英国の設計事務所は59%で、前年の41%から増えました。米国では、AIA(米国建築家協会)が2025年3月に発表したAI導入に関する調査で、日常的にAIを使う建築家は6%、AIソリューションを導入済みの事務所は8%、さらに20%が導入を進めている段階でした。
- AIを使う英国の設計事務所、2024年(RIBA): 41%
- AIを使う英国の設計事務所、2025年(RIBA): 59%
- AIを導入済みの米国の事務所(AIA、2025年): 8%
- AIを日常的に使う米国の建築家(AIA、2025年): 6%
出典:RIBA AI Report 2025、AIA「建築設計事務所におけるAI導入」調査(2025年3月)。調査ごとに測定対象が異なるため、水準そのものより傾向を比べてください。
同じAIAの調査では、回答者の84%が手作業の自動化に前向きな一方、90%が不正確さとそれに伴うリスクを懸念しています。この組み合わせは、生成された間取り図の使いどころとぴったり重なります。定型的なレイアウト作業はスピードを上げ、結果はプロが確認する。RIBAのレポートも、AIは建築家の役割を拡張するが置き換えはしない、とはっきり述べています。
AIの下書きからCAD、確認申請図書まで:現実的なワークフロー
ArchHomeAIの「要望書から2D間取り図」が、無理のない流れの中でどう位置づくかを紹介します。要望書を貼り付けるか書き込むと、部屋、壁、ドア、窓、家具、寸法、外構要素の入ったA3の図面が返ってきます。表題欄、凡例、面積表、建具表、スケールバー、方位記号も付いていて、印刷やPDF・SVGでの書き出しが可能です。家のリアルなパースから間取り図を生成することもできます。
- 同じ要望書から2〜3案を生成し、変える条件を1つずつにして比べます(寝室を東側か西側か、車庫を前面か側面か)。
- いちばんよい案に上のチェックリストで赤を入れ、2D間取りエディターで不具合を直します。コマンド入力に対応したCADのような操作で、DXF、SVG、PDF、IFCに書き出せます。
- 3Dプランナーで中を歩き、天井高、見通し、家具のスケール感を確かめます。
- DXFまたはIFCと要望書を建築士や構造設計者に渡し、確認申請図書と施工図を作成してもらいます。
費用は、間取り図が1フロアにつき3クレジット。新規アカウントには無料クレジットが5つ付くので、平屋の要望書なら支払い前に試せます。100クレジット$11からのパッケージはクレジット料金をご覧ください。一から自分で描きたい人には、採寸、縮尺、記号をまとめた間取り図の書き方ガイドがあります。
要望書を間取り図にしてみましょう 部屋、広さ、敷地を書くだけで、編集できるA3の間取り図の下書きが届きます。建築士に会う前に試して、詰めておきましょう。 間取り図を作成する
AI間取り図のよくある失敗と、使わないほうがいい場面
- きれいな画像を図面だと思い込む。壁を編集できず、面積の合計も合わないなら描き直しましょう。
- 敷地を無視する。方位、道路、建ぺい率や後退距離を入れずに描いたレイアウトは、宙に浮いた図にすぎません。
- 全部を一度に求める。延べ100㎡に12部屋を詰め込めば、モデルは使えない広さまで部屋を縮めます。
- 2階建てで階段を軽視する。たとえば階高2.9mで蹴上げを上りやすい20cmにすると15段になり、踏面22cmなら水平方向に約3.1mが必要です。多くの下書きはその半分ほどに押し込んでいます。
- そのまま確認申請に出す。AIの間取り図は初期の設計の下書きで、建築士の審査も記名もありません。
私たちの考えはこうです。AI間取り図作成ツールは、安く自問自答するために使いましょう。「これは違う」とわかる10枚の下書きは、疑ったことのない1枚の完成図より価値があります。そのうえで勝ち残った案と優先順位のリストを専門家に持ち込めば、基本的なゾーニングではなく、本当の設計判断に建築士の時間を使ってもらえます。
よくある質問
おすすめのAI間取り図作成ツールは?
編集可能なベクター(DXF、SVG、IFC)で書き出せて、指定した敷地境界と部屋の広さを守り、あとから壁を編集できるものを選びましょう。平面的な画像しか出ないツールは参考にはなっても計画には使えません。同じ詳しい要望書で各ツールを試し、天井高、階段寸法、ドアの開きといった基本チェックを通る下書きがいくつあるかで比べるのがおすすめです。
自分の要望からAIで間取りを作れますか?
下書きとしてなら作れます。敷地の寸法、方位、目標面積つきの部屋リスト、隣接させたい部屋を伝えれば、AIは数分で実用的なレイアウトを返します。ただし建ぺい率や容積率、構造、設備はチェックしないので、出力はCADで詰めるための出発点です。そのうえで建築士に確認申請用の図面を依頼します。
AIが作った間取り図は正確ですか?
おおよそです。寸法や面積は指示した値に近いことが多いものの、狭すぎる部屋、ふさがれたドア、短すぎる階段などがよく含まれます。天井高2.1m以上、住宅の階段幅75cm以上、採光1/7以上といった基準や地域の条例と照らし合わせてから使いましょう。
AIの間取り図で確認申請は通りますか?
基本的には通りません。確認申請では法令に適合した図書が求められ、木造でも延べ面積100㎡を超える住宅などは建築士でなければ設計できません。AIの間取り図は、その建築士に渡す要望書として役立ちます。部屋の広さ、優先順位、希望のレイアウトが一目でわかるので、設計期間の短縮や修正回数の削減につながります。
無料で使えるAI間取り図作成ツールはありますか?
無料枠やお試しクレジットのあるツールはいくつかあります。ArchHomeAIでは新規アカウントに無料クレジットが5つ付き、間取り図は1フロアにつき3クレジットなので、平屋1プランを無料で生成できます。どのツールでも、無料の書き出しが画像だけか、DXFやSVGなど編集できるファイルも含むかを確認しましょう。
AIは建築家の仕事を奪いますか?
現時点の調査を見る限り、答えはノーです。RIBAのAIレポート2025では英国の設計事務所の59%がすでにAIを使っており、AIは建築家の役割を置き換えるのではなく拡張すると結論づけています。AIAの2025年の調査では、米国の建築の専門家の90%が不正確さを懸念していました。AIは初期のレイアウト作業を速くしますが、敷地の判断、法令、構造、責任は人が担います。
出典
本ガイドの作成方法:すべての数値は末尾に記載した出典にもとづき、2026年9月に確認したものです。価格は地域、仕様、年によって異なります。
- House-GAN: Relational Generative Adversarial Networks for Graph-constrained House Layout Generation — arXiv (Nauata et al., 2020)
- ResPlan: A Large-Scale Vector-Graph Dataset of 17,000 Residential Floor Plans — arXiv (Indiana University, 2025)
- 建築基準法施行令(第21条・第23条) — e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 建築基準法(第28条) — e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 建築士法(第3条〜第3条の3) — e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し — 国土交通省
- 不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 — 不動産公正取引協議会連合会
- フラット35利用者調査(2025年度) — 住宅金融支援機構
- Minimum Dimensions in the IRC — Fine Homebuilding
- IRC Section R311.7.5: Stair Treads & Risers (Handout #437) — City of Boise
- Kitchen Planning Guidelines with Access Standards — National Kitchen & Bath Association (NKBA)
- Characteristics of New Housing: Highlights — U.S. Census Bureau
- New research explores perceptions and opportunities of artificial intelligence — The American Institute of Architects (AIA)
- RIBA AI Report 2025 — Royal Institute of British Architects (RIBA)